市議会議員 野口光男
枚方市議会 令和4年9月定例月議会(第6日)2022-09-26 議事録より
◯広瀬ひとみ議員
議案第49号 市役所の位置に関する条例の一部改正について、日本共産党議員団を代表し、反対討論を行います。
まず第1に、市役所移転、市駅前大開発の住民自治に反する進め方についてです。
本条例は、現市役所の位置を枚方市駅周辺のまちのにぎわいづくりのために、現在の庁舎位置から府民センターなどがある5)街区へ、まだ土地の確保はされていませんが、取りあえず条例で大垣内町2丁目524番地に移すものです。
地方自治法第4条に規定する庁舎の移転は、市民にとっても重大な問題です。だからこそ、特別多数議決が実施されるわけです。にもかかわらず、市民説明もないまま、こうして議案が提案されること自体が間違っています。
枚方市駅周辺再整備計画の見直しの際、市民説明会を開催するとされていますが、実施されたとしても来年3月から4月。既に本条例改正の手続が終わってしまっていては、庁舎位置に関する市民意見は全く反映されないままとなってしまいます。
加えて、多くの市民は、土地区画整理事業によって市民の財産である公共用地が民間に明け渡されていく、結果的には売却されることを知らされていません。
こうした進め方は極めて問題で、憲法に規定された住民自治に反すると言わなければなりません。市長の市民の声を聴く姿勢が問われます。
第2に、市役所を駅前から立ち退かせることは、市民の利便性に反する点です。
市が市民との対話、市民説明会を先延ばしにする理由は何でしょうか。なぜ市役所が駅から遠のくのか、この単純な疑問にまともに答えられないからではないでしょうか。
地方自治法第4条第2項には、市役所の位置を定め、また、これを変更するに当たっては、住民の利用に最も便利であるように考慮を払わなければならないとあります。現市役所は駅から5分の好立地、こんなに便利な市役所はありません。市は、市役所を駅から遠のかせることで、ウオーカブルなまちづくり、歩きたくなるまちづくりを進めると説明してきましたが、みんながみんな、どんどん歩ける元気な方や、そしてICTを使いこなせる方ばかりではなく、市役所を駅から引き離すべきではありません。
第3に、老朽化が進む市役所の建て替えは、待ったなしの課題であり、そのためにも4)街区市有地内での整備を真剣に検討すべき点です。
市役所は、1960年(昭和35年)に本館が建設されてから、既に築後62年を迎えています。2018年(平成30年)の大阪北部地震による損傷は、対策工事が実施されたものの、いまだに壁はひびだらけ、雨漏りにペットシートを敷いてしのぐ状況です。
今後、起こり得る大規模地震に対し、最低限の耐震化は実施しているものの、災害対応の拠点、発災後の暮らしを守る拠点としての役割を果たせるのでしょうか。極めて心配で、市役所の建て替えは急務です。
しかし、本条例改正では、市役所を5)街区に移転させることになります。市が示すスケジュールでは、今後、新庁舎基本計画をまとめ、新庁舎の整備が完了し、オープンするのは早くとも9年先、まだまだ先の話です。このため、位置条例の施行日は規則に委ねられています。市役所が移転するためには、3)街区で現在整備が進められている新たな駅ビルの完成を待ち、そこに府民センターが移転し、その後に残された旧府民センターの建物を除却し、地盤のかさ上げなどを実施するため、うまく進んだとしても市役所は既に築71年となっています。これで、いいのでしょうか。
当然、諸事情でさらに遅れるリスクもあります。市役所は果たして、いつ移転、建て替えできるのでしょうか。5)街区への移転、建て替えではなく、現在の4)街区内の市有地を活用した建て替え案を真剣に検討すべきです。
第4に、住民自治や市民の安全、安心よりも、にぎわい優先になっている点です。
急がれるはずの市役所の整備は、枚方市駅周辺再整備の中に位置づけられ、庁舎整備の緊急性よりも駅前のにぎわいづくりが最優先されています。かつては、近鉄百貨店の閉鎖で寂れた市駅前の状況からも駅前のにぎわいづくりは大きな課題となり、市民の皆さんからも、駅前に商業施設やにぎわいづくりを求める声が上がりました。しかし、今はどうでしょうか。旧近鉄がT-SITEに変わり、総合文化芸術センターが整備され、3)街区整備で北口ロータリー周辺から市駅新ビルへと新たなまちづくり、にぎわいの拠点が整備されつつあります。にぎわいは、もう十分ではないでしょうか。
さきの全員協議会で、4)5)街区のまちづくりについての考え方(案)が示されました。結局、民間に駅前一等地を明け渡し、将来のまちづくりに大きな支障を生じさせかねないタワーマンション整備をも可能とする開発案です。
市民への説明、対話を拒む一方で、民間ディベロッパーとはサウンディング型市場調査と称して対話を進めてきました。結局、市民の声や知恵は反映されず、民間ディベロッパーのもうけを最大に保障する開発案ではないでしょうか。
加えて、降って湧いた90億円のアリーナ整備です。6月の議会では、民間提案により5,000人規模のアリーナを市役所と合築による公設公営で整備する案まで検討することが示されました。民間では採算が合わないから公設公営でと求められ、にぎわいのためにと調査費まで計上し、市はやる気を示しています。
この間、枚方市は、財政が厳しい、財政が厳しい、そう言って計画にもなかった公立保育所の民営化を進め、保護者の怒りを買ってきました。あの保育所民営化は一体何だったのか、財政が厳しいと公立保育所を潰しながら公設公営で興行中心のアリーナを整備する、保護者の皆さんは改めて怒りを感じられるのではないでしょうか。財源は企業版ふるさと納税、寄附を当てに検討すると言いますが、庁舎とアリーナの合築を前提に経済波及効果が算出され、もっともらしく効果があると説明するのは欺瞞です。
第5に、長期財政との整合性についてです。
現段階でも総事業費855億円、市費負担369億円もの事業費を要するまちづくり案です。昨今の物価高騰、資材高騰の状況からすると、これで収まるとも言えません。将来世代に大きな負担をかぶせることになるのではないでしょうか。
市長は、先ほど財政シミュレーションでも挑戦できる状況であると言われました。しかし、枚方市は今やるべきことができているでしょうか。年間2億円の子ども医療費助成の拡充費を捻出できない自治体が、3億円の教育予算を削り、支援教育に混乱を与えている自治体が、今なお中学校給食の全員喫食ができていない自治体が、優先してやるべきこともやらずに大風呂敷を広げた大開発に乗り出す、まさにギャンブルです。
長期財政の見通しがもっともらしく示されていますが、ここにはこうした実施すべき予算は決断が先送りにされて、含まれてもいません。新名神の開通に向け、新たな道路整備が進むJR沿線のまちづくりも進めなければなりません。そうしたときに、市駅周辺への過剰投資はバランスを欠く財政運営ではないでしょうか。
最後に、枚方市役所の移転を決定することは、4)・5)街区も含めた大開発事業にゴーサインを出すことになります。本来、市駅周辺で解決すべきことは何だったのか、狭隘なロータリーをはじめとする渋滞問題、そのロータリーに面して市街地開発により整備したビルが老朽化していること、そして何より市民の命や安全を守るための庁舎の建て替えや枚方消防署の建て替え整備です。このまま移転に踏み出せば、本当に必要なことには手が打てないまま、財政面でも逼迫し、市民の安全も守れず、ニーズにも応えられない、まともな自治体でなくなっていくことを強く危惧します。20年・30年先のまちづくりだけではなくて、50年・100年先を見越して庁舎の移転は考えるべきです。
以上の点から、庁舎の移転には大反対だと述べ、討論といたします。
◯奥野美佳議員(野口が要約させていただいています)
条例案に反対する理由について、順次述べます。
まず第1に、条例案が定める5)街区に新庁舎を移転、建設することの不合理さです。
議会の質疑の中で、市は、ICTの活用で市役所に行かなくても済むことを目指すこと、また、将来の人口減少の中で市役所への来庁者が確実に減少することを認められています。したがって、市庁舎が5)街区に位置することで、にぎわいなるものを創出することにならないことは明白です。結局、どうしても市役所を訪れなくてはならない人にとって、駅から遠くなり、不便をおかけするだけになると思います。
一方の4)街区でも売却によってできるメインの建築物はタワーマンション、すなわち巨大な集合住宅で、合わせてみどりの大空間をつくるというのですから、もはや都市型の住宅街です。
そこで急に出てきたのが、アリーナを新庁舎に合築するという案なのでしょうが、これについては計画も構想もなく、必要性、財政負担、経営の在り方など、一切が定まっていないために適切な説明ができず、結局、今後いつまでかかるか分からない検討に先送りせざるを得なくなったのです。
5)街区への新庁舎建設案が市の財政負担の縮減を可能にするのではないかという誤解です。府民センターが移転した跡に市の新庁舎を建設し、4)街区内の市有地を売却して得た財源を新庁舎の建設費用に充てるという想定です。非常に残念ながら、どう想定しても、そんなシナリオは成り立ちません。なぜなら、5)街区の新庁舎建設用地のほとんどは大阪府の所有地で、枚方市がただで使えるものではないからです。
市は、土地区画整理事業という事業手法を用いるとしているので非常に分かりにくくなっていますが、結局、枚方市は大阪府の土地と4)街区の枚方市の土地を交換して、大阪府の土地を手に入れなければなりません。大阪府は、枚方市と交換して得た4)街区の枚方市の土地を民間企業に売り払ってお金に換えますから、実は枚方市が4)街区の枚方市の土地を売却して大阪府に支払うのと同じことになるわけです。
さらに、土地区画整理事業では、市が大阪府から直接土地を買う場合と異なり、北河内府民センターの今の古い建物についての移転補償費を支払わなければなりません。これは土地区画整理事業費を増大させる要因となりますが、この費用についても土地区画整理事業地内に広大な土地を保有している枚方市の財政負担を増加させることになるのです。また、市は、5)街区へ安全に歩行者を誘導するための長いペデストリアンデッキを造るとか、4)街区と5)街区をつなぐシンボリックなみどりの大空間をつくるために、コンビニや民間商業ビルを移転させるとか、さらには4)街区の中に大きな道路を造ったりする計画を立て、土地区画整理事業費を膨らませて、枚方市の財政負担を増大させています。5)街区への新庁舎移転は、枚方市の財政負担を広げる一方のものでしかないわけです。
では、4)街区のまちづくりはどうなのでしょうか。これもさきの私の一般質問で明らかにさせていただいたように、市が行おうとしていることは将来にわたる適切な土地利用を担保するために必要な、きめ細やかな制約はかけず、取りあえず仮換地で得た大阪府の土地や市の土地が高値で売却できたらそれでいい。分譲のタワーマンションが複合施設に合築されて、多数の区分所有者が存在する超大型の建築物が駅前の市有地の真ん中に2棟もできて、将来に禍根を残すことになってもいい。市が求める各種都市機能はあくまでも誘導なので、選定作業の中で本当に提案があるのか、ないのかは分からないが、それでも構わない。そういった極めて無責任なものになりかねないのです。しかし、それでは自治体行政が行うべき将来における責任も視野に入れた公共的で長期的な公有財産管理、ファシリティーマネジメントの完全放棄だと私は考えます。
広大な駅前に広がる市有地を売却によって手放すことなく、4)街区内での新庁舎の建設やまちづくりを進める方向で議論を重ねることができたならば、例えば、複合施設のタワーマンションを合築する代わりに、そこに市庁舎を合築すればどうかとか、アリーナのような新しい魅力創出のための施設も4)街区の中に整備できるのではないかとか、子どもたちのための施設を整備できるのではないかなど、市民の皆さんの様々な意見を取り入れた整備プランをつくることができる可能性も生まれてくるわけです。
何よりもまず、市民の皆さんとの対話を重ねながら、地に足のついた、身の丈に合った事業展開とすべきだということであります。これらの可能性を完全に放棄するような5)街区移転、4)街区市有地売却ありきにつなげられてしまう市役所の位置を定める条例を今決定するのは、今と将来に及ぶ枚方市の利益、枚方市民の利益に全く反するものであると考えます。
2つ目は、先ほどの質疑で詳細に述べたように、この条例案は条例の施行という非常に重要な内容を、これまで枚方市役所の中で築き上げてきた施行時期の明記という制約もなく、規則、すなわち市長に白紙委任させる内容となっていること。また、地方自治法に定める予算先議原則を反して提案していることから、枚方市でつくり上げてきた二元代表制重視のルールを破壊し、公の施設の建設に必要な税の使い道は議会で審議して決めるという、財政民主主義から逸脱しているものと考えます。
以上、2点の理由により、議案第49号 市役所の位置に関する条例の一部改正については反対であると申し上げ、反対意見の表明といたします。
◯前田富枝議員討論要旨(野口が要約させていただいています)
議案に対する疑念について、まず1点目として、やはりなぜ今の時点で位置条例を改正しなければならないのかということです。庁舎の整備は早くても令和13年ということです。まだどんな庁舎を造るのかも、それこそアリーナと合築するのかも、DX時代にどういった機能を本庁に集約化させるのかといったことも何にも分からない状態です。なぜ、こんなに急いでこの時期に条例改正をするのかといえば、やっぱり民間事業者の利益を優先したまちづくり、また、大阪府のためのまちづくりであり、市民不在のまちづくりであると言わざるも得ませんし、それはおかしいことでしょうということです。
2点目として、財政の目当てが明らかでないことです。
今回の位置条例に先立って開催された全員協議会で示された市駅周辺再整備の財政シミュレーションでは、中学校給食や支援教育に係る費用は全く示されておりません。それに、4)街区の地下埋設物に係る費用についても明確な金額は提示されていません。
また、そもそも長期財政の見通し自体、確固たるもののように示されていますけれども、先日の一般質問でも申し上げたとおり、あくまで先々の予測でしかなくて、それなりに確かなところは、せいぜい二、三年ぐらいまでのものです。誰も10年先のことなんか分かりません。
行政実例でも、市役所の位置の変更に関する条例の制定時期について、「建築に必要な財源のみとおしもたたない時期に制定することは適当でない」とされているわけです。
先ほども申し上げましたが、早くても令和13年、相当先の話の新庁舎建設、しかもどんな庁舎になるのか何も分からない状態で、しかも中学校給食や支援教育等々も含めて、市全体としての収支が成り立つのか、資料としても市民にも議会にも明示されていません。
市政全体を俯瞰的に中長期的に見て財政面で支障がないのか、これを明らかにして説明する責任があるのではないでしょうか。こんな空手形に対して、今の時点で将来に責任を持ってオーケーを出すことなんてできません。
3点目、何といっても、このまちづくりがあまりにも市民をないがしろにしているという点です。
本来固めておくべき、こうした様々な要素が、ことごとく漠然としており、そんな状況で庁舎の位置だけ先に決めておこうとするのは無理があるのではないかと思います。それに、こういう大事な条例は、もともとこのタイミングで提出することを決めていたからって、結論ありきで押し切るものではありません。しっかり議会との対話も図って、市民への説明責任も果たしながら、可能な限りの合意形成を見出していくべきです。議論も重ねず、確固たる信念も持てずに何に焦っておられるのですか。そんなので、本当に市民のためにと自信の持てる枚方の未来が、伏見シティーが想像できておられますか。一番怖いのは、間違った判断をすることです。市民を、そして私たちを甘く見ないでください。ちゃんと市民のための、枚方のことを思って判断させていただくと申し上げ、議案に対する反対討論といたします。
12月定例月議会の状況
野口の一般質問(12月15日)での9月議会で市庁舎の移転条例が否決されたにもかかわらず、依然として⑤街区の庁舎ありきの事業の進め方をしている。市庁舎の位置を再検討せよと求めた質問に対して、市駅周辺まち活性化部長は「本庁舎の位置条例の改正は、連鎖型まちづくりを止めることなく、再整備基本計画をできる限り早期かつ円滑に実現していくなどの観点から、9月定例月議会に提案した。市としては、その際にいただきました市民への説明不足や提案のタイミングなどの御意見を含め、厳しい結果を真摯に受け止めている。一方で、⑤街区における新庁舎整備と関連する③街区の財産取得の契約並びに④⑤街区の環境影響評価を含む補正予算については御可決いただいたことから、再整備基本計画及び④⑤街区の市有地を有効活用したまちづくりの考え方(案)に基づくまちの実現に向けて、いただいた課題解決を含め、引き続き議会の御意見を伺いながら取り組む」と答えています。
つまり、これまでと変わらないやり方で進めています。
- 市民への説明会を開催しない。現在校区コミュニ協議会に対してタウンミーティングを開催し、その中で若干の説明をしているようですが、内容については全く報告されていません。
- 具体的な財政計画が示されていません。
- 行政サービスフロアーでの市民窓口のICT化については実際にどのようになるのかが未定なままです。
- 連鎖型開発計画ではこれから10年以上も事業が続くことになります。
- 現在の市駅周辺の問題点、課題が先送りされたままになります。
民間主導の大型開発・都市計画事業はやめて、枚方市駅周辺の課題、市駅周辺道路の渋滞と一般車両の送迎スペースが無いことなどの解決していくこと
既存の公共サービス、公共施設をすべての市民が利用できる環境を整備する。そのための公共施設循環バスや高齢者や障害者への外出支援を実施すること
枚方のまちは市民と行政が協働することによって「福祉のまち」「子育てするなら枚方で」「社会教育のまち」として発展してきました。市民活動、防災拠点となる市役所こそが求められます。文化、子育て、まちづくり、健康など様々な市民活動の発信地となって賑わいを創出することをすべきです。